妊婦ってのは、かなりツラい。

　我が年齢をおもんばかって、「そろそろ二人目は？」の声がにぎやかな昨今、自分でもそろそろねぇ、そろそろかもねぇと思わないではないのだけれど―― うーん、妊娠かあ、あの十月十日をもういっぺん最初っから味わうのかと思うと、なんかこう、自分の中でシューッと萎えるものがあるのですね（意欲、それとも性欲？）。

　いや、私なんぞ軽い方だったと思う。悪阻（つわりと読みます。しかし何度見てもすごい漢字だね）もそれほどでもなかったし、前回書いた出産時のトラブルをのぞけば定期検診はつねに「順調ですね」と言われて３分でお終い。もっと重い人はたくさんいらっしゃると思う。

　とはいえ、ツラいものはツライのだ。経産婦（この呼び名もすごいよね）じゃない皆さん、想像だけでもしてみてくださいよ。おへそのシワが消えるほどぱんぱんに膨らんだ腹を抱え、満足に寝返りさえうてず、指で押すと跡がなかなか戻らないくらい浮腫んだ足がじんじんとだるく、尿意は１時間ごとに襲いかかってくる。夜、おだやかに眠りたいというただそれだけの願いさえ許されない。それが妊婦。クシャミの途端にちょろっと尿の漏れる不快、『渡る世間は鬼ばかり』に泣けてしまうほど感情がオバサン化（女性ホルモンが分泌しまくるからか？）する恐怖、そのくせ愛する夫の誘いもうっとうしく感じてしまう自分が疎ましいやら哀しいやら。それが妊婦。

　代理出産という言葉をめぐって、その必要性や、ビジネスとして請け負う人もいることは理解できる。しかし、代理出産の依頼者は、自分以外の誰かにこうした「ものすごーく鬱陶しい数カ月」を送らせるのだという事を考えると、どうもこう、違和感というか、イヤーな感じがありますわな。日本人の依頼者はクリスマスカードの一枚もよこさないといって、アメリカの代理母に嫌われる傾向にあるなんてルポをテレビで見た覚えがあるけど、それなんてもう言語道断でしょう。隠したいんだか、忘れたいんだか知らないけどさ。

　生命科学という分野が発展すればするほど、子どもを持つことが、「受精」とか「出産」といった時間の「点」だけで語られがちな印象を感じる。そこにもすごく違和感。 　妊娠初期、悪阻の具合を聞かれると「２ヶ月間、毎日が二日酔いのよーなもの」と説明していた。点じゃなくて、線なんだよ。

　それは、子どもは生むより育てる方が大事（オオゴトとも読む）という事実にもつながるわけで。それについては、また今後、言いたいことがいっぱいあるぜぃ。