受精卵は人か否か Life Science Information Net produced by 最相葉月／質問の小部屋／Ｑ＆Ａ

　多くの生物の細胞は２倍体で，（性染色体以外は）同じ染色体を２本ずつ持っています。すなわちほとんどの遺伝子は２個ずつ存在し，片方の遺伝子に異常な突然変異が入っても他方がバックアップとして働きます。奇形や重篤な病気の原因となる遺伝子異常は多く存在しますが，正常型遺伝子（A）と劣性突然変異遺伝子（a）の組合せ（Aa）はヘテロと呼ばれ，見かけ上は正常型と同じになります。同じ血縁関係にある人同士の結婚ではヘテロ同士の組合せになる確立が高くなり，AaとAaの結婚では，子の遺伝子型の出現頻度はメンデルの法則によりAA：Aa：aa=１：２：１となり，異常が現れる劣性ホモ（aa）の子の出現頻度は２５％です。同じ血縁関係にある人同士でも，優性ホモ（AA）とヘテロ（Aa）の結婚では，子の遺伝子型の出現頻度はAA：Aa：aa=１：１：０となり，異常が現れる子の出現頻度は０％です。

　血縁内の結婚においてヘテロ同士になる確率は近親になるに従って高くなり，近親交配の場合の奇形児やその他の異常児の出現頻度が実際に高いことは事実です。その意味では四親等のいとこ同士の結婚は統計学的には三親等同士の次に危険率が高くなります。このように，近親交配の危険性とは，子供が血縁内に蓄積された劣性突然変異遺伝子を同時に（２個）受け継いで劣性ホモになる確率だけの問題であり，人でもその他の動物でも同じ問題となります。

　多くの国において法律で近親婚が禁じられていますが，どこまでを禁じるかは国により異なっています。また近親婚のタブーは遺伝学的な根拠が知られる以前の時代から存在していましたので，純粋に優生学上の問題だけではないようです。優生学上の問題だけで規制するのでしたら，明らかに危険性の高い高齢出産をも禁じることになりますが，そのような法律はおそらくどの国にもないものと思われます。

質問一覧へもどる

目次へ

Copyright (c) 2001-2004, Life Science information Net, All Rights Reserved.
本サイトの著作権は各筆者ならびに Life Science information Net に帰属します。無断転載はお断りします。
リンクはご自由にしていただいて結構ですが、別ウインドウを開く形で、別のサイトであると分かる形でのリンクをお願いします。
「受精卵は人か否か」 "Life Science Information Net" produced by Hazuki Saisho 最相葉月