受精卵は人か否か Life Science Information Net produced by 最相葉月／トピックス

クローン技術 2002.07.12
アメリカ、ブッシュ大統領諮問機関がクローン技術の利用へ勧告案２案を発表

米ブッシュ大統領の諮問機関、生命倫理評議会は2002年7月11日、生殖補助医療目的（human cloning)と生命科学研究目的(cloning for biomedical research)のクローン技術の利用に関する勧告を２案を発表しました。

多数派の勧告案は、クローン技術研究を４年間禁止し、その間にどのような規制が有効であるかをさらに慎重に議論すべきだとするものでした。さらに多数派は、倫理的に深い社会政策的判断を伴う勧告を行うために、人間の胚を利用する研究、移植前に行う受精卵や胚の遺伝子診断、胚や生殖細胞を遺伝子操作、それに関連するすべての分野についての最新動向と研究計画の再調査を行うよう連邦政府に求めました。多数派は、委員長のLeon R.Kass（生命倫理学）やRebecca S.Dresser（医療倫理、法）、Fransis Fukuyama（国際政治学）をはじめ10名です。

また、少数派の勧告案は、クローン人間の誕生に結びつく不妊治療としてのクローン技術は禁止し、一定の制限を設けた上で医療目的のクローン技術研究は推進すべきだとするものでした。少数派は、Elizabeth H.Blackburn（細胞生物学）、Daniel W.Foster（医学）James Q.Wilson（政治学）ら7名。(棄権1名）

アメリカでは、クローン技術の利用について国家レベルの報告書が二つ発表されています。一つはクリントン前大統領の諮問機関NBACが1997年に発表したもの、もう一つは米科学アカデミーNASが2002年1月に発表したものです。これらはいずれも、クローン技術の利用についてはさらに倫理的社会的議論が必要であるとするものでした。

2001年11月28日に設立されたブッシュ大統領諮問の当委員会では、クローン人間や研究利用を目的とするクローン技術双方の規制のあり方について、上記二つの報告書が要求したさらなる倫理的社会的観点からの議論を行うため、これをたんなる技術上の進展ととらえるだけではなく、技術的、倫理的な文脈からみた「広い意味での人間」をとらえるべく議論を進めてきました。今回の報告書で注目すべきなのは、すべての委員がそれぞれ異なる考え方をしており、今の段階でコンセンサスを得るためにその相違点を埋もれさせ偽りの合意を得るよりは、最終的な勧告に至るまでの考え方の違いを含め、委員それぞれに真に多様な考え方があることを公平にあますところなく表明することを目指した点です。このため、今回の報告書が、政策担当者や国民がこの問題の是非を考える助けになることを願っている、と記されています。

▲The President's Council on Bioethics(ブッシュ大統領諮問生命倫理評議会)
http://www.bioethics.gov/

▲クローン人間と人間の尊厳に関する報告書
http://www.bioethics.gov/reports/cloningreport/index.html

▲クリントン元大統領の諮問機関NBAC
http://www.georgetown.edu/research/nrcbl/nbac/

▲米科学アカデミーNAS
Scientific and Medical Aspects of Human Reproductive Cloning
http://www.nap.edu/books/0309076374/html/

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