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最終更新日 020408



クローン技術 2002.04.08
クローン・ベビーを妊娠か

2002年4月6日各紙朝刊は、クローンベビーが現在妊娠8週目にあることを一斉に報じました。第一報は4月3日のアラブ首長国連邦ガルフ・ニュース紙オンライン版で、これをアブダビ発タス通信が世界中に発信したものです。

女性の妊娠を成功させたのは、イタリア人医師セベリノ・アンティノリで、イタリア不妊治療の権威です。2001年1月には米ケンタッキー大学元教授パノス・ザボスとともに男性側の不妊対策としてクローン人間を誕生させることを宣言して物議を醸していました。第三者の精子を使うよりは、自分の夫の遺伝子を受け継ぐ子供を望むカップルを対象とするものです。

アンティノリ医師は妊娠までの経緯や場所、女性の国籍などは明らかにしていませんでしたが、8日のロンドン共同によると、5日にアンティノリ医師から直接連絡を受けたイタリアのテンポ紙科学記者ジアンカルロ・カルツォラリは、クローン胚は「アラブの高貴な富豪」のもので実験は「あるイスラム国で進行中」と伝えたとのことです。実験には5000組の不妊のカップル(含む日本人)が参加し、「無限の資金提供を受けている」「結果を出すためにカネをいくらでも使える。西欧諸国では不可能な研究が、イスラム国だからこそできた」とも語ったようです。

ある特定の個体の体細胞を核を除いた卵子に移植して遺伝子をそのまま受け継ぐ子供をつくるクローン技術では、これまで羊やヤギ、牛、マウス、猫、最近ではウサギが誕生しています。しかし、クローン胚ができる確率が低く、妊娠に至っても途中で流産、また出産に際して過大児になったり臓器異常で出産後まもなく死亡、また成長しても早死するものもあり、安全性が疑問視されています。

また、特定の個体と同じ遺伝子構造をもつ子供をつくることは人間の尊厳を冒すものとして40カ国以上が禁止し、今年2月からは、国連でクローン技術を人間に利用することを禁止する条約づくりに向けた会議が行われていました。今回のクローンベビー妊娠は、こうした国際的な流れに反するものとして批判が相次いでいます。

ガルフ・ニュースは3月26日の報道で、アラブ首長国連邦はアラブ連盟の職員が世話人をつとめるシンポジウム「遺伝子技術の未来と国際的なクローン計画のディベート」に「洗練された医療技術であるクローン技術について国際的に最も著名な医師」であるアンティノリ医師(ローマにあるイタリア・メディカル・リサーチ・センター教授)を招待し、4月3日に不妊治療としてのクローン技術に関する講演を開催することを予告していました。場所はアブダビのZayed Centere for Coordination and Follow-up(ZCCF)で、アンティノリ医師の講演にはアラブ連盟カイロ本部代表のHisham Yousufやボスニア前首相Haris Silajdzicが招待されました。

アンティノリ医師の発表に会場からは質問が相次ぎましたが、「クローン動物でみられた問題が人間では見られなかったが、危険性はあり慎重であらねばならない」と語り、「遺伝情報をリセットして新しくする鍵となる細胞を発見したので心臓病を治療できる有益な情報もある」と医療としてのクローン研究の有効性を述べました。また、自分の研究は「弱味につけこんでいるという批判もあるが、私は医師であり人を傷つけることはない」と繰り返しました。

なお、今回シンポジウムを行ったZCCFは「科学技術はアラブ首長国連邦の発展のための支柱の一つであり、科学研究を支援するのは当センターの役割の一つである」と述べています。また、アラブ連盟とは、加盟国の独立やその主権を擁護するために経済、社会、文化などの問題に協力、調整することを目的としたもので、主たる民族がアラビア語を話す国家から成る組織です。本部はカイロ。


しかし、ロンドン共同によると、アラブ世界の不妊治療の権威であるサウジアラビアのサミル・アバスは「イスラム諸国は以前からクローン人間に反対している」と指摘し、イスラム国のどこかで実験が行われているという説明に強い疑念を表明したとのことです。このほか、イタリアほか各国の医学界宗教界から批判が相次いでいます。

アンティノリ医師はジャーナリストの取材にはこれ以上は応じないとしていますが、もしこれが事実で胎児が順調に育てば、年内に世界初のクローンベビーが誕生することになります。



▲第一報を報じたアラブ首長国連邦ガルフ・ニュース記事
http://www.gulfnews.com/Articles/news.asp?ArticleID=46275

▲英ニュー・サイエンティスト誌4月2日オンラインニュース
(アンティノリ医師の不妊治療や病気治療のためのクローン技術発言について、各専門家からの科学的な反論が掲載されています)
http://www.newscientist.com/news/news.jsp?id=ns99992133


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