受精卵は人か否か Life Science Information Net produced by 最相葉月／トピックス

不妊治療 2001.10.26
「カップルの同意もなく、受精卵が廃棄されたり研究利用されていた……」　朝日新聞調査より

2001年10月24付朝日新聞朝刊によると、全国で不妊治療を行い受精卵を凍結保存している医療機関にアンケートを行った結果、年間５０００個以上の使い道のなくなった凍結受精卵が廃棄されたり研究に利用されていることがわかりました。さらに、医療機関の４分の１がカップルの同意なく勝手に捨てたり研究に使用していたそうです。
一般に不妊治療と呼ばれる生殖補助医療の規制については、1998年から厚生科学審議会で議論が行われてきました。2000年12月にその専門委員会
の報告書が発表されました（注１）。

ここでは、不妊のカップルに限って、すでに使用されなくなった凍結保存された受精卵（国はこれを余剰胚とよんでいます。でも、凍結されていようが、廃棄がきまっていようが、受精卵は受精卵ですよね）を無償提供することを認める考え方もあったのですが、最近になって、本当に遺伝的なつながりのまったくない子どもになる受精卵を他人にあげてもいいのか、養子制度など法的関係性をどうするのか、などについて議論が再燃しています。

受精卵の研究利用については、生殖補助医療の研究に限って、分裂を開始して２週間以内（左右がわかれる原始線条が現れるまで。これは国際的にもほぼ同様）であればカップルの同意の上で認めていました。そして、この2001年９月には、生殖補助医療以外のことで受精卵利用を認める指針が施行されました。使用されなくなった凍結受精卵から取り出すES細胞研究です。今後の再生医療に役立たせるためですが、この研究にはもちろんカップルの同意書が必要で、二重の厳しい審査体制を設けています。（注２）

日本産科婦人科学会（注３）では今後、利用の可能性が高まる凍結受精卵の取り扱いと同意の取り方等について各医療機関に通知はしていましたが、基本的には自主性に委ねられていました。これまで生殖補助医療全体を規制する法律がなかったためですが、さらなる周知徹底が望まれます。

なお、現在、生殖補助医療の規制を審議している厚生科学技術会議生殖補助医療部会が国民から広く意見を求めています。「パブリックコメントのすすめ」欄に資料と詳細がありますのでみなさんのご意見を送ってみませんか。

▲注１）
「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」（厚生科学審議会先端医療技術評価部会生殖補助医療技術に関する専門委員会　2000年12月）
http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0012/s1228-1_18.html

▲注２）
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室
2001年9月に施行された「ヒトＥＳ細胞の樹立及び使用に関する指針」とES細胞の説明などがあります。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/index.htm

▲注３）
日本産科婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/index.html

目次へ

Copyright (c) 2001-2003, Life Science information Net, All Rights Reserved.
本サイトの著作権は各筆者ならびに Life Science information Net に帰属します。無断転載はお断りします。
リンクはご自由にしていただいて結構ですが、別ウインドウを開く形で、別のサイトであると分かる形でのリンクをお願いします。
「受精卵は人か否か」 "Life Science Information Net" produced by Hazuki Saisho 最相葉月